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■目次
大問1
大問2
大問3
大問4
大問5
■大問1
問題1-1: 1 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
【中学一年生の安藤真宙は、サッカー部が部員不足でなくなってしまい、サッカーを続けることができなくなる。他に入りたいと思う部活がひとつもない真宙は、ある日の帰り道、同級生の中井天音から、理科部へ誘われる。天音の話を聞きながら歩いていると、校庭で機械を運ぶ高校生たちの姿が目に入る。その様子を見ていた真宙は、高校生の中に小学校のサッカーチームの先輩、柳数生を見つけ、久ぶりに言葉を交わす。】
(辻村深月著『この夏の星を見る」による。一部省略がある。)
問1 「中井、何言ってんの? と当惑して、思わず空を見上げる。」とありますが、このときの真宙の様子を説明した文として最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
ア 天音がいきなり「ウチュウセン」と言い出したことにとまどい、宇宙線は肉眼で見ることができないことを確認しようと空を見渡している。
イ 天音がいきなり「ウチュウセン」と言い出したことにどう対応していいかわからず、本当に宇宙船が飛んでいるのかと目を空に向けている。
ウ 天音がいきなり「ウチュウセン」と言い出したことに恥ずかしさを感じ、天音や柳くんの顔を見ることができずに天を仰いでいる。
エ 天音がいきなり「ウチュウセン」と言い出したことにがっかりしてしまい、子どものようなことを口にする天音から目を背けている。
解答 : イ
問題1-2: 「真宙の中で、体温がすっと下がっていく感覚がする。」とありますが、このときの真宙の心情を説明した文として最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
ア 宇宙線や物理部の活動について天音や柳くんが興奮して話をしていたので、話題が変わったことで少しずつ落ち着きを取り戻して、嬉しく感じている。
イ 宇宙線という自分にはわからない話がずっと続いていたので、真宙にもわかる柳くんの中学生の頃のことに話題を変えることができて、ほっとしている。
ウ それまで宇宙線や物理部について話していたのに、突然柳くんの中学生の頃のことという天音にはわからない話を始めてしまったことを反省している。
エ 思わず陸上部のことを聞いてしまったあとで、柳くんが陸上をやっていたことは聞いてはいけなかったのかもしれないと思い直し、不安になっている。
解答 : エ
問題1-3: 「ちょっと気まずそうに頬をかきながら」とありますが、柳くんはなぜ気まずかったのですか。物理部、センスの二つの言葉を使って、十五字以上、二十五字以内で書きなさい。ただし、二つの言葉を使う順序は問いません。
「真宙と天音に、□□□…から。」
解答 : (例)物理のセンスがあるから物理部に入ったと思われた (23文字)
問題1-4: 「柳くんの答えが衝撃だったからだ。」とありますが、このときの真宙の様子について次のようにまとめました。空欄にあてはまる内容を、答え、スポーツの二つの言葉を使って、三十字以上、四十字以内で書きなさい。ただし、二つの言葉を使う順序は問いません。
「真宙は、柳くんが□□□□…ことに、衝撃を受けている。」
解答 :(例)スポーツの世界を離れて、答えがないことが楽しくて物理部で研究や観測をしている (38文字)
問題1-5:本文の内容や表現について述べた文として適切でないものを、次のア~オの中から二つ選び、その記号を書きなさい。
ア「真宙は驚いた」のように作品中の登場人物ではない第三者の客観的な視点に立つ語り手によって物語が展開される一方、「なんでオレが、ショック受けてるんだろう」のように真宙の心情が地の文でも表現されている。
イ「まるでそこに宇宙線が見えるみたいに空を見上げる」や「途方に暮れたような真宙の呟き」などの比喩を用いることで、登場人物の行動や心情がわかりやすく表現されている。
ウ「真宙は、えっと目を見開いた」という表現によって、天音が初対面の柳くんに気軽に話しかけている様子に真宙が戸惑いや驚きを感じていることを印象づけている。
エ「腕組みをして長く黙り込んだ後で」や「柳くんが、今度もまた『うーん。』と長く考え込んだ」という表現によって、柳くんが真宙や天音の質問に真剣に答えようとしていることを印象づけている。
オ 本文は、真宙、天音、柳くんの三者がやりとりをする「現在」の場面と、真宙が小学校時代の自分を回想する「過去」の場面とで構成されており、真宙の長年にわたる柳くんへの憧れの強さが表現されている。
解答 :(ウ)と(オ)
■大問2
問題2-1:次の各問いに答えなさい。
問1 次の下線部の漢字には読みがなをつけ、かたかなは漢字に改めなさい。
(1) 試供品を無料で1頒布する。
(2) 彼を懐柔して味方にする。
(3) 炎天下の作業でかいた汗を拭う。
(4) 大臣がシュウニンのあいさつをする。
(5) アヤういところで難を逃れた。
解答 : ⑴はんぶ ⑵かいじゅう ⑶ぬぐ(う) ⑷就任 ⑸危(うい)
問題2-2:次の下線部「ない」と同じ意味(用法)であるものを、あとのア~エの文の下線部から一つ選び、その記号を書きなさい。
「わたしは、あまり漫画を読まない」
ア 今日は何もしないで、のんびりしましょう。
イ 友人にお願いをしたら、頼りない返事だった。
ウ マラソンに挑戦したいが、長距離を走ったことはない。
エ この部屋は、エアコンが壊れていて涼しくない。
解答 :ア
解説 :問題の「読まない」は、習慣的な動作の否定を表している。選択肢のなかで、習慣的な動作の否定という意味を持つのは、ア。
イ 状態をあらわす「ない」のため違う
ウ 経験の否定を表す「ない」のため違う
エ 状態の否定を表す「ない」のため違う
問題2-3:次の下線部の熟語の構成(成り立ち)が他の三つと異なるものを、ア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
「ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに(ア)到達した頃、降ってわいた(イ)災難、メロスの足は、はたと、止まった。見よ、前方の川を。昨日の豪雨で山の水源地は氾濫し、(ウ)濁流とうとうと下流に集まり、猛勢一挙に橋を(エ)破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、こっぱみじんに橋げたを跳ね飛ばしていた。
(太宰治著『走れメロス」による。)
解答 :ウ
解説 :
(ア) 到達: 「到」も「達」も「いたる」という意味を持ち、意味が似た漢字を重ねて一つの意味を表す熟語。
(イ) 災難: 「災い」と「難」を組み合わせ、「わざわい」という意味を表す熟語。「災」と「難」は対等な関係で、合わせて一つの意味を表す。
(ウ) 濁流: 「濁った」と「流れ」を組み合わせ、「にごった流れ」という意味を表す熟語です。「濁」が「流」を修飾する関係。
(エ) 破壊: 「破る」と「壊す」を組み合わせ、「こわす」という意味を表す熟語。「破」と「壊」は対等な関係で、合わせて一つの意味を表す。
したがって、他の熟語が意味の似た漢字を重ねるか、対等な関係であるのに対し、「(ウ) 濁流」だけが上の漢字が下の漢字を修飾する関係にあるという点で構成が異なる。
問題2-4①: 問4 中学生のAさんは、委員会活動で調べてわかったことについて、全校集会でスピーチを行うことになりました。このスピーチに使う次の[原稿]を読んで、あとの問いに答えなさい。
[原稿]
昨日の給食の献立は、ご飯、牛乳、ふりかけ、焼きシシャモ、さといものそぼろ煮、ほうれんそうのおひたし、かぶのとろみ汁でした。皆さんおいしく食べましたか。先日配った給食委員会新聞ではシシャモについての特集を掲載しましたが、今日は給食の野菜について調べたことを発表します。
ここで問題です。昨日の献立の中には、何種類の野菜の名前が入っていたでしょうか。答えは、さといも、ほうれんそう、かぶの三種類です。これらの野菜がよく給食で使われるのは、埼玉県でたくさん採れます。
地産地消という言葉を聞いたことがありますよね。現在、さまざまな理由で地産地消の取り組みが行われています。
地産地消とは、どのような意味でしょうか。[I]
地産地消には、地域を活性化する効果が見込まれています。また、消費者にとっては生産者との結びつきが強くなることで、ニーズに合った農産物が増えたり、安心で新鮮な農産物が手に入りやすくなったりする効果もあります。
さて、昨日の献立の野菜のうち、さといもとほうれんそうは、2021年産の野菜において、埼玉県の収穫量が全国一位となったものです。かぶも全国で二位でした。埼玉県は、県内で採れる多くの農産物を、たくさんの人に知ってもらったり、活用してもらったりするための取り組みをしています。例えば、県内の施設での野菜収穫体験や、埼玉県産の農産物を活用した加工食品の宣伝などです。
給食委員会としては、地産地消の取り組みの紹介から、地域の野菜の魅力を感じてもらい、地域の活性化につなげてほしいと思っています。給食に使われている野菜は、地域の生産者の思いがこもっていますから、毎日の給食をしっかり食べましょう。
以上で発表を終わります。ありがとうございました。
⑴次のア~エは、[原稿]中の空欄[I]に記入されていた文です。文脈が通るように並べかえ、その順に記号で書きなさい。
ア その地産地消の現状について、次の二点を調べてみました。
イ 次に、埼玉県産の農産物を普及させる取り組みについても調べました。
ウ まず、地産地消の効果について調べました。
エ それは「その地域で生産された食材をその地域で消費すること」という意味です。
解答 :エ→ア→ウ→イ
解説 :[原稿]中の空欄[I]の直前より、「地産地消」の意味を聞いているので、[I]の中で一番初めにくるのは、「地産地消」の説明をしている(エ)である。
残りの選択肢から、文の流れに合うものは(ア)となり、また、[原稿]中の[I]の後文より、「地産地消の効果について」→「埼玉県産の農産物を普及させる取り組みについて」の順で書かれているので、選択肢の文の内容より次に来るのは(ウ)→(イ)。
問題2-4②: ⑵このスピーチをする際のAさんの話し方として適切でないものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
ア 自分の感じたことを強く伝えるために、言葉の抑揚や間の取り方を意識しながら話す。
イ 最初から最後まで手元の原稿から目を離さずに一定の速度で話す。
ウ 話の内容が伝わっているかどうか、聞き手の反応を確かめながら話す。
エ 伝えたい内容や相手に応じて、話す速度や声の大きさなどを工夫して話す。
解答 :イ
解説 :(イ)スピーチでは、手元の原稿から目を離さなず話すことは、聞き手の反応も確認することができず、聞き手からの印象も良く見えなくなる時がある。そのため、スピーチの話し方として相応しくない。
問題2-4③:⑶Aさんは下線部の文が不自然であると考え、それを推敲しました。 推敲後の文中の下線部と空欄の関係が適切になるように、空欄[Ⅱ]にあてはまる言葉を書きなさい。
([原稿]中の文)
これらの野菜がよく給食で使われるのは、埼玉県でたくさん採れます。
(推敲後の文)
これらの野菜がよく給食で使われるのは、埼玉県でたくさん[Ⅱ]。
解答 :(例)採れるからです
解説 :「~から」を使うことで、「これらの野菜がよく給食で使われるのは」という文に対する説明の文にすることができる。
「これらの野菜がよく給食でつかわれるのは」→説明「埼玉県でたくさん採れるからです。」
■大問3
問題3-1:次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
(小川さやか著「手放すことで自己を打ち立てる――タンザニアのインフォーマル経済における所有・贈与・人格」による。 一部省略がある。)(注) ※遊休資産・・・・・・活用されていない資産。
※インフォーマル経済・・・・・・行政の指導の下で行われていない経済活動。
※アイデンティティ・・・・・・ここでは、個性や独自性、自分らしさのこと。
※マオリ・・・・・・ニュージーランドのポリネシア系先住民。
※紐帯・・・・・・二つのものを結びつけるもの。
※エージェント………………代理人。
①こうした循環とありますが、その説明として最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
ア タンザニアでは、モノの融通や共通が進んでおり、ICTを利用した不用品の交換などを通じて限られた資源を有効活用しているということ。
イ タンザニアでは、資本主義経済の進展で失われた「つながり」やコミュニティの再興を通じて、モノの融通や共有を推進しているということ。
ウ タンザニアでは、商品を購入する能力が不足している人びとが多いため、モノは誰かからの贈与によってはじめて入手可能になるということ。
エ タンザニアでは、モノは寿命限界までリユースやリサイクルされ、贈与や転売が繰り返されることで様々な人の所有物へと変化していくこと。
解答 :エ
問題3-2:②モノの価値は、使用価値だけでなく、モノの社会的履歴に伴って変化する交換価値によっても決まるとありますが、「モノの社会的履歴」に伴って「交換価値」が変化するとはどういうことですか。次の空欄にあてはまる内容を、商品化、付帯の二つの言葉を使って、三十五字以上、四十五字以内で書きなさい。ただし、二つの言葉を使う順序は問いません。
モノは、□□…ということ。
解答 :(例)元の所有者などのアイデンティティが付帯することにより、再び商品化されるときに価値が変わる (44文字)
問題3-3:③日本では、恋人からもらった手編みのマフラーを誰か別の人に贈ったり売ったりすることは忌避されがちだ。とありますが、その理由として最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
ア もらった手編みのマフラーには編んだ人の人格が憑いていると感じ、マフラーを手放すことは編んだ人との関係性を断つことを意味すると考えるから。
イ もらった手編みのマフラーには編んだ人の「彼/彼女らしさ」があり、マフラーを捨てることで贈り手の人格そのものを否定することにつながるから。
ウ もらった手編みのマフラーには編んだ人の思いが込められており、マフラーを手放すことは贈り手への裏切りであり慣習的にも法的にも不当なものだから。
エ もらった手編みのマフラーには編んだ人の魂が宿っており、マフラーを介して形成された「魂と魂との紐帯」によりそもそも手放すことができなくなるから。
解答 :(例)元の所有者などのアイデンティティが付帯することにより、再び商品化されるときに価値が変わる (44文字)
問題3-4:④所有(私的所有)と他者への贈与や分配を対立するものとみなす とありますが、この考え方を説明した文として最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
ア 私的所有されたモノは、持ち主である個人に所有権があり贈与や分配ができないのに対し、他者から贈与や分配されたモノは、さらに別の他者に贈与や分配ができるという考え方。
イ 私的所有されたモノには、持ち主である個人が排他的な権利を有しているのに対し、モノを他者に贈与したり分配したりしたときには、その権利が失われてしまうという考え方。
ウ 個人がモノを所有するには、身体による労働が必要であるのに対し、他者から贈与や分配されたモノは、労働せず得られたゆえに、真に私的所有したとは言えないという考え方。
エ 個人がモノを所有するには、身体のなかに閉じ込められた自己が必要になるのに対し、他者に贈与したり分配したりするときには、自己と身体の同一視が前提になるという考え方。
解答 :イ/p>
問題3-5:⑤私的所有に失敗することを「損失」とみなし、贈与や分配を「利他的な行為」であるとみなす必然性はどこにもない。とありますが、筆者はなぜこのように考えるのですか。次の空欄にあてはまる内容を、媒介、帰属の二つの言葉を使って、四十字以上、五十字以内で書きなさい。ただし、二つの言葉を使う順序は問いません。
私的所有に失敗したり、モノを贈与したりしても、□□□…と考えることができるから。
解答 :(例)元の所有者がモノを媒介として受け手に働きかけているならば、そのモノはまだ元の所有者に帰属している (48文字)/p>
■大問4
問題4-1:次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。※( )は口語訳です。
「一休和尚は「たき木」という所に時々住んでおられた。そのあたりの村々は近衛殿の御領地であったが、家老の左近が農民から年貢を強引に取るので、農民たちはこれを嘆いていた。農民たちが近衛殿への訴状を考えていたところへ、一休がやってきた。」
百姓共(農民たち)一休を請じ、「此訴状御書き下されよ。」とたのみければ、「やすき事也、いかなることぞや。」とのたまへば、「しかじかのことにて侍る。」と申しければ、「長々しき状までもいるべからず。是をもちて近衛殿へ捧げよ。」とて歌よみてやらせたまふ。
世の中は月にむら雲花に風近衛殿には左近なりけり
とよみて、これをつかはされければ、村々の百姓、「①かかる事にては、免おほく給はる(年貢のお許しを多く)こと思ひもよらず。」と申しければ、一休「ひらさら(ひたすら)此の歌のみ捧げよ。」と仰せられて帰り給へば、②おのおのせんぎしけれ共(集まって相談したが)、本より土のつきたる男共なれば、一筆よみかく事ならざれば、ぜひなく(しかたなく)、かの歌をささげければ、近衛殿御覧じて、「是はいかなる人のしける。」と仰出されける(おっしゃった)。百姓申しけるは、「たき木の一休の御作にて候。」と申せば、「その放者ならでは、かかる事いはん人は今の世に覚えず(今の世にはいない)。」と③興じ給ひて、おほくの免を下されけるとなり。
〈【一休ばなし】による。〉
(注) ※放者…ふざけたことをする人。
①かかる事 とありますが、ここでは誰にどうすることを指していますか。次の空欄にあてはまる内容を十五字以内で書きなさい。
□□□…こと。
解答 :(例)近衛殿に一休の歌をささげる (13文字)
解説 :[現代語訳]
「一休和尚は、「たき木」という所に時々住んでいらっしゃった。その辺りの村々は近衛殿の領地であったが、家老の左近が農民から年貢を強引に取り立てるので、農民たちはこのことを嘆いていた。農民たちが近衛殿への訴状を書こうとしていたところに、一休がやってきた。」
農民たちは一休に頼んで、「この訴状を書いてください。」とお願いしたので、一休が「簡単なことだ。どんなことか。」とおっしゃると、農民たちが「かくかくしかじかのことでございます。」と申し上げたので、「長々とした訴状を書くまでもない。これを近衛殿に差し上げなさい。」と言って、歌を詠んでお渡しになった。
「世の中は、月にはむら雲、花には風、近衛殿には左近がいるようなものだ。」
と詠んで、これをお渡しになったので、村々の農民(百姓)は、「このようなことでは、年貢の免除をたくさんいただくことはとても考えられない。」と申し上げたが、一休は「ひたすらこの歌だけを差し上げなさい。」とおっしゃって帰られたので、農民(百姓)たちは皆で集まって相談したが、元々字を書くことに慣れていない者たちなので、どうしようもなく、仕方なくその歌を差し上げたところ、近衛殿がご覧になって、「これは一体誰が詠んだのか。」とおっしゃった。農民が申し上げたのは、「たき木の一休様がお作りになったものでございます。」と申し上げると、「あのとんでもない人(一休)でなければ、このようなことを言う人は今の世にはいないだろう。」とおもしろがって、たくさんの年貢の免除を与えられたということだ。
[解説]
前文より、農民たちの話を聞いた一休は、自分の歌を近衛殿に渡すように言ったが、それに対して農民たちが「①かかる事にては、免おほく給はる(年貢のお許しを多く)こと思ひもよらず。」=「このようなことでは、年貢の免除をたくさんいただくことはとても考えられない。」と言っているので、①かかる事とは、近衛殿に一休の歌をささげること考える。
問題4-2:②おのおのとありますが、これは誰のことを指していますか。最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
ア 百姓共 イ 一休 ウ 近衛殿 エ 左近
解答 :ア
解説 :②おのおの の前文より、一休の「ひらさら(ひたすら)此の歌のみ捧げよ。」の言葉を聞いた後の行動だと分かるので、前文で一休と会話をしていた農民(百姓)達を選ぶ。
問題4-3:③興じ給ひてとありますが、この部分を「現代仮名遣い」に直し、すべてひらがなで書きなさい。
解答 :きょうじたまいて
問題4-4:次は、この文章を読んだあとの先生とAさんの会話です。空欄[I]にあてはまる内容として最も適切なものを、あとのア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
先生 「文章中に『世の中は月にむら雲花に風近衛殿には左近なりけり』とありますが、これはどのようなことを伝えようとしたものなのでし ょうか。」
Aさん 「上の句には、『月』と『むら雲』、『花』と『風』という組み合わせが表現されています。これをふまえて下の句『近衛殿には左近なりけり』を考えると、近衛殿が領地を治める上で、[I]ということを伝えようとしたものだと考えられます。」
先生 「そのとおりです。一休はその意図が、近衛殿にはわかってもらえるという確信があったのでしょうね。」
ア 農民たちと左近は公平に扱われなければならない
イ 左近が反乱の動きをみせているので警戒するべきだ
ウ 左近が農民たちを苦しめることを責めないでほしい
エ 農民たちを苦しめる左近の存在が妨げになっている
解答 :エ
解説 :一休の歌は、上の句で自然界の不調和(月にむら雲、花に風)を述べ、下の句で「近衛殿には左近なりけり」と結んでいる。これは、自然界の不調和と同じように、近衛殿の領地における問題の原因が左近の悪政にある、つまり左近の存在が領地を治める上での妨げになっているという比喩表現である。
ア: 農民と左近の公平な扱いについては触れられていない。
イ: 左近の反乱の動きは歌には示唆されていない。
ウ: 左近を責めないでほしいという意図は読み取れない。
■大問5
問題5-1:次の資料は、「持続可能な開発目標(SDGs)の推進」について、主に県内在住者を対象に調査し、その調査の結果をまとめたものです。
国語の授業で、この資料から読み取ったことをもとに「持続可能な社会を築くためにわたしたちができること」について、一人一人が自分の考えを文章にまとめることにしました。あとの(注意)に従って、あなたの考えを書きなさい。

(注意)
⑴二段落構成とし、第一段落では、あなたが資料から読み取った内容を、第二段落では、第一段落の内容に関連させて、自分の体験(見たこと聞いたことなども含む)をふまえてあなたの考えを書くこと。
⑵文章は、十一行以上、十三行以上以内で書くこと。
⑶原稿用紙の正しい使い方に従って、文字、仮名遣いも正確に書くこと。
⑷題名・氏名は書かないで、一行目から本文を書くこと。
解答 :※省略
解説 :(注意)に書かれていることに従って十一行以上、十三行以内で書く。