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令和7年度_学力検査問題過去問【奈良】- 国語
令和7年度_学力検査問題過去問【奈良】- 国語 解答
■目次
大問1
大問2
大問3
大問4
大問5
■大問1
次の文章を読み、各問いに答えよ。
何かと話題のAI(正確に言うと生成AI)だが、AIと連歌を巻いてみませんかという魅力的なお誘いをいただき、先日東京でその会に参加してきた。
AIの驚異的な対応力、あるいは会話力について改めて解説する必要はないだろうが、彼らがどのように文を組み立てていくかは、単純化して言えば、ある言葉が来た時に、次にどんな言葉が続く確率がもっとも高いかを、これまでに学習したすべてのテキストから計算して割り出し、一語一語を繋ぎ、生成していくものである。 ある意味、言葉と言葉のつながりがもっとも密な代表としての文が出来上がることになる。①AIが作った文章はどこか既視感があるとか、優等生的などと評される所以である。
AIを使って短歌を作ることは可能か、それは許されるのかといった問題は、この一年ほどのあいだに急上昇してきた、まだ解決のつかない問題である。 しかし、一つはっきりしているのは、生成AIが文を作る時と、私たちが短歌なら短歌という詩を作る時とでは、言葉の選択が真逆と言ってもいいような関係にあるということ。
たとえば「夕日」という言葉の後ろには、一般的には「美しい」などの言葉が来る確率は高いだろうが、②短歌や詩ではそのような言葉の続き具合をもっとも嫌がるものである。 出来合いの言葉、みんなが感じるような当たり前の展開はまずは避けたいところ。
そんなことも意識に置き、言葉の繋ぎ具合を A[キソう]連歌という場でAIと対決してみるのはおもしろいだろうと引き受けたのだった。 当日はなんと私のこれまでの六千首あまりの歌をすべて学習した「永田くんAI」まで登場して驚いたが、長句(五七五) 短句(七七)のリアルな応酬は、期待どおりおもしろいものとなった。
おもしろいだけでなく、AIと連歌を巻く過程で、逆に詩を作るとはどういうことか、言葉そのものへの考え方、詩歌における言葉の選択の本質的な問題が炙り出されるように見えてきたのは、期待どおりの展開であった。
そんななかで、当日会場でのトークで、私が指摘しておいた一つのことだけを書いておこうと思う。
言葉はどれだけたくさんあろうと所詮有限である。 この意味で、私は「言葉は究極のデジタルである。」と言ってきた。 言葉をB[ナラべれば]、どんな情景でも感情でも、まあ大体は表現できるだろうと思われるかもしれないが、所詮有限の道具を使って、無限の多様性に満ちたアナログの世界を、たとえば目の前の景色や自分の思いを、完全に表現し尽せるものではない。 私たちがもっている言葉は、現実の世界に対応するには隙間だらけなのである。
だから、何かを表現できたと思った時には、その背後に、圧倒的な量の、表現できなかったものがあることを思い浮かべておく必要がある。 私たちは言葉で表現されたものを読むとき、どうしても「表現されたもの」にばかり意識や興味が行きがちであるが、それ以上に、表現できなかったもの、敢えて表現されなかったものにこそ思いを致す、実はそれこそが「読む」という行為なのである。 先ほど言った③隙間を読むことが大切なのである。
このような言葉というデジタル情報から、表現された内容を、さらに表現されていないものまで含めたアナログ情報を読み取ることは、機械にはできない。 機械は、デジタル情報をデジタル情報に変換することは得意だが、④アナログ情報をデジタル化したり、デジタル情報からアナログ情報を再構成することは決してできないのだ。 デジタルーアナログ変換は、今のところ人にしかできない。
[Ⅰ] その意味で、創作という行為、そして読みや鑑賞という行為は、人にしかできないものと言ってよい。 会場では、そんな指摘をしておいた。
さて、その連歌であるが、当たり前の言葉の付け方にならないよう確率の低い語の選択を許すなど、いくつかのチャレンジをその場でC[模索]しながら、会場と一体となって進行した。 AIの実力は、音数合わせが苦手ということも含めて、まだまだ人間にはD[及ばない]というのが正直な感想であったが、圧倒的なAIの進化の速度を考えると、一年後に対戦してみれば、結構、互角の応酬が期待できるのかもしれない。
(永田和宏「AIと連歌を巻く」による)
(注)AI=人工知能
連歌を巻いて=和歌の長句(五七五)と短句(七七)を二人で応答して詠んで
1-1:[]A、Bの片仮名を漢字で書き、[]C、Dの漢字の読みを平仮名で書け。
解答 : A 競う
B 並べれれば
C もさく
D およばない
解説 : A [キソう]: 競う
B [ナラべれば]: 並べれば
C [模索]: もさく
D [及ばない]: およばない
1-2:線部の意味として最も適切なものを、次のアーエから一つ選び、その記号を書け。
ア 結局のところ
イ 時と場合によっては
ウ 何はなくとも
エ さらに付け加えると
解答 : ア
解説 : 線部「所詮」の意味は、「あれこれ考えてみても、結局は」「つまるところ」といった、最終的な結論や行き着く先を述べる際に用いられる語です。多くの場合、後に否定的な内容や、期待に反する結果が続くというニュアンスを持ちます。
この意味に最も合致するのは、アの「結局のところ」です。
ア 結局のところ(→ 最終的な結論として)
イ 時と場合によっては
ウ 何はなくとも(→ とにかく、まず第一に)
エ さらに付け加えると
1-3:線①と評される理由として最も適切なものを、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
ア蓄積されたデータをもとに一語一語の接続の仕方を分析することで、言葉と言葉の関連性を正確に把握できるから。
イ蓄積されたデータから一語一語の使用状況を逐一明らかにすることで、特定の言葉の使用頻度が一挙に可視化されるから。
ウ ある言葉と関係の深い言葉を蓄積されたデータから探し出すことで、言葉同士のつながりが一般的なものになりやすいから。
エある言葉に続く言葉をテキスト上の言葉をもとに新しく作り出すことで、言葉同士のつながりが一過性のものになりやすいから。
解答 : ウ
解説 : 前文に「ある言葉が来た時に、次にどんな言葉が続く確率がもっとも高いかを、これまでに学習したすべてのテキストから計算して割り出し、一語一語を繋ぎ、生成していくものである。 ある意味、言葉と言葉のつながりがもっとも密な代表としての文が出来上がることになる。」とあります。
これは、最も一般的で、平均的、かつ間違いのない言葉のつながりを持った文章が生成されることを意味します。そのため、多くの人がすでに見たことがあるような、当たり障りのない文章になりやすいのです。
ア 「正確に把握」は正しいですが、これが既視感や優等生的な文になる直接的な理由としては弱いです。「最も確率の高い接続」を選ぶ点が重要です。
イ 文脈と直接関係ありません。AIが文章を作る仕組みそのものの説明ではありません。
ウ 「関係の深い言葉」 = 「続く確率がもっとも高い言葉」であり、それが選ばれる結果、「つながりが一般的なものになりやすい」という説明は、文章中の仕組みと結果を結びつけており、最も適切です。
エ AIは学習したテキストから言葉を選び出すのであり、新しく作り出すわけではありません。また、結果としてつながりは一般的なものになりやすく、一過性のものになるという記述は不適切です。
1-4:線②からわかる筆者の考えとして最も適切なものを、次のアー工から一つ選び、その記号を書け。
ア 短歌や詩では、各時代の流行を後世に残そうとして言葉を選択するため、より強い印象を与える表現が好まれる。
イ短歌や詩では、社会的な関心が高い話題を明確に伝えようとして言葉を選択するため、他者の共感を呼びやすい。
ウ 短歌や詩では、個人的な体験をより普遍化しようとして言葉を選択するため、作者の思いがわかりやすく伝わる。
エ 短歌や詩では、主観的な思いを工夫を凝らして表現しようとして言葉を選択するため、作者の独創性が生まれる。
解答 : エ
解説 : 「そのような言葉の続き具合」とは、直前の段落にあるAIの文章生成の仕組み、すなわち「次にどんな言葉が続く確率がもっとも高いかを…計算して割り出し」て繋げた、最も一般的で、当たり前の、平均的な言葉のつながりを指しています。
筆者はその直後で、短歌や詩における言葉の選択について次のように述べています。
「出来合いの言葉、みんなが感じるような当たり前の展開はまずは避けたいところ。」
このことから、筆者は、短歌や詩では、一般的な連想や確率の高い言葉のつながりを避け、独創的で、予想を裏切るような言葉の選択を重んじていることがわかります。
ア 強い印象を求めるのはそうかもしれませんが、「各時代の流行を後世に残す」が主眼であるとは言えません。
イ 「社会的な関心が高い話題」に限定されていません。また、一般的な展開を嫌うことから、かえって「他者の共感を呼びやすい」とは限りません。
ウ 「当たり前の展開を避ける」ことは、「わかりやすく伝わる」こととは逆の方向性であり、不適切です。
エ 「工夫を凝らす」とは、「当たり前の展開を避ける」ことに他ならず、その結果、「独創性」が生まれます。これが、AIの確率論的な言葉の選択と真逆であるという筆者の考えを最もよく表しています。
1-5:線③とはどのようなことか。文章中の言葉を用いて簡潔に書け。
解答 : 表現の背後にあるものに思いを致すこと。
解説 : 「隙間を読む」とは、言葉で表現されたものにばかり意識がいくのではなく、それ以上に、表現できなかったもの、敢えて表現されなかったものにこそ思いを致すことである。
1-6:線④とあるが、「アナログ情報をデジタル化する」ことを言い換えている言葉を、【I】の部分から二字で抜き出して書け。
解答 : 創作
解説 : 【Ⅰ】の部分の直前には、
「このような言葉というデジタル情報から、表現された内容を、さらに表現されていないものまで含めたアナログ情報を読み取ることは、機械にはできない。」
とあり、この後の【Ⅰ】の文は、
「その意味で、創作という行為、そして読みや鑑賞という行為は、人にしかできないものと言ってよい。」
となっています。
ここで、「アナログ情報をデジタル化する」という行為に対応する言葉は、人間が行う表現活動、すなわち「創作」です。
1-7:この文章の述べ方の特色として最も適切なものを、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
ア 言葉に対する筆者の思いを、様々な場面で活用できるAIの汎用性の高さを例示しつつ、具体的に述べている。
イ 言葉に対する筆者の思いを、AIと連歌を巻く過程で再認識したことを指摘する中で、筋道立てて述べている。
ウ短歌に対する筆者の思いを、AIが短歌を作ることの是非についての持論を展開する中で、詳細に述べている。
エ 短歌に対する筆者の思いを、文の組み立て方に対するAIの驚異的な対応力を賞賛しつつ、率直に述べている。
解答 : イ
解説 : ア AIの汎用性の高さが話題の中心ではありません。
イ AIと連歌を巻く過程で、言葉に対する筆者の思いを再認識したことを指摘し、筋道立てて述べています。これが最も適切です。
ウ AIが短歌を作る是非は「解決のつかない問題」として軽く触れられているだけで、持論を展開し詳細に述べているわけではありません。
エ AIの対応力を賞賛することが主眼ではなく、その仕組みと詩歌の本質を対比させるために用いています。
■大問2
次の文章を読み、各問いに答えよ。
【Ⅰ】 社会学が出発点にする「規範」は、個人が個人の中でそれぞれ独立して作る「規範」ではありません。 それは共同の「規範」です。 ですから、社会学は「人びとが大事だと考えること」について考えるのです。 もちろん人びとが大事だと考えることは一つでないし、あることについてその大事さ加減は人によって違います。 しかし、単に個人にとっての話ではなく、みんなにとって大事だろうと考える人がいたら、それは社会学のいとなみの出発点になります。
もし、「人びとが大事だと考えること」について、社会の共通認識が確固たるものとしてあり、それを解決する手段もすでに明解であるなら、社会学の出番はないかもしれません。 しかし、ほとんどの「みんなにとって大事だろう」ことは、それがどう大事なのか、どう問題なのか、何が問題なのか、どうすればよいのか、について、まだまだわからなかったり、みんなが納得できていなかったり、あるいは解決していないものでしょう。 社会学はそこを考えようとします。 社会学はそうした問題について、対話的にデータを集めながら、①対話的に考えようとします。
社会学は、共同の規範を作り上げるための共同のいとなみにほかなりません。 もちろんそれは、「共同の規範」なんてありうるのか、あるいは、とは誰と誰の共同なのか、という②開かれた問いをつねに含みつつのいとなみです。 社会学は、複雑な社会の中で、社会に伴走しながら知識生産していく学問です。 しかし、伴走は簡単ではありません。 何より不確実性に満ちているので、確実な正解を提案できるわけではありません。 社会と一緒に考えて、正解らしきものを提示する。 でもそれは本当に正解かどうかわからないので、それを実際に進めてみて、検証して、また考える。
【Ⅱ】 社会に伴走するこのような知のあり方を考えるとき、自然保護分野での「順応的管理」というものがヒントになると思います。
たとえば、近年の北海道では、アザラシが増えて漁業被害の問題が生じています。 アザラシが漁網をやぶってしまったり、網の中の魚を食べてしまったりするのです。 漁業被害を減らすためには、アザラシの数を減らす必要があります。 しかし、一方でアザラシを絶滅させることも避けなければなりません。 そこで、まずアザラシが現実にどのくらいいるのかを実測から推計します。 しかし、その推計は不確実性を強くもちます。 また対策を立てたとして、それがどういう効果があるかはやってみないとわかりませんし、やってみても正確な効果についてはわかりません。 ③そうした不確実性を前提にしながら、得られる科学的なデータをもとに、アザラシをどのくらい駆除すればよいのか計画を立て、実行します。 その結果がどうなったのかをモニタリングし、その結果からまた計画を立て直します。 そういうことの繰り返しが順応的管理です。
今日世界中の自然保護においてこの順応的管理の考え方の基礎を築いたのは、C・S・ホリングという生物学者です。 ホリングは、順応的管理の考え方をこう強調します。 いくらがんばって大量のデータを集めたとしても、生態系や社会について私たちが知識として獲得できることは、獲得できない部分に比べればはるかに小さい。 だから、不確実なもの、知らないことをなくそうとしてもだめだ。 大事なことは、不確実なもの、知らないものにどう対処するかなのだ、とホリングは説きます。 完全に「わかる」ことを目標とするのではなくて、ある程度わかったところで周到に実行してみて、その結果を見ながらまた分析して、軌道修正していく、そういう④順応的な管理のしくみを作ることが必要だ、というのです。
【Ⅲ】 とすれば、社会学が果たすべき役割は、その問題についての誰からも否定されないすべての真実をつきとめることではなく、可能な限り調べて考えて「こうではないか。」という暫定的な提言をする、それを実行する、そしてまた調べて考える、というプロセスをとることです。 社会学そのものがそうした順応性をもった営為です。 順応的な営為としての社会学の目的は、社会のしくみの全面的な「解明」でないと考えたほうがよいでしょう。
社会学の議論は、狭い意味での科学的厳密さより、共同の規範を言葉で表現し、提案・提言することに重きを置きます。 別の言い方をすれば、不変の公理ではなく、どうなっているのか、どうすべきなのか、について日常言語に近い言葉で表現し、提案しようとするのが社会学です。 つまり、社会学は、みんなで規範の物語を作り出そうといういとなみです。
(宮内泰介「社会学をはじめる 複雑さを生きる技法」による)
(注)社会学=人間の社会的共同生活の構造や機能について研究する学問
モニタリング=観察し、記録すること
プロセス=過程
2-1:線部の対義語を、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
ア恣意的なイ 画期的な ウ合理的な エ 恒久的な
解答 : エ
解説 : 「暫定的な」は、「仮の措置として決まっているさま。かりそめ」という意味です。つまり、一時的で、後で変更される可能性があることを示します。
この対義語は、永続的で変わらないことを意味する言葉です。
ア 恣意的な:自分勝手な考えに基づくさま。(対義語ではない)
イ 画期的な:それまでになかった、新しい時代をひらくさま。(対義語ではない)
ウ 合理的な:道理や論理にかなっているさま。(対義語ではない)
エ 恒久的な:いつまでも変わらず続くさま。永久的。(対義語として適切)
2-2:線①の理由として最も適切なものを、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
ア人びとが大事だと考えることは一つではないので、多くの問題から重要なものだけを抽出する必要があるから。
イ人びとが守るべき規範についての認識は人によって異なるので、個人の判断基準を平準化する必要があるから。
ウ 人びとが大事だと考えることについての認識は人によって異なるので、みんなで考えていく必要があるから。
エ人びとが守るべき規範は一つではないので、社会生活で遵守すべき基準を多様に示していく必要があるから。
解答 : ウ
解説 : 線部①の直前に
「しかし、ほとんどの「みんなにとって大事だろう」ことは、それがどう大事なのか、どう問題なのか、何が問題なのか、どうすればよいのか、について、まだまだわからなかったり、みんなが納得できていなかったり、あるいは解決していないものでしょう。」とあります。
これは、社会が抱える問題に対する共通認識や解決策が、人々の間で定まっていない、つまり「人によって異なる」状態にあることを示しています。社会学は、こうした共通認識がない状態の「みんなにとって大事だろう」ことを考えようとする学問です。この認識のズレや不確実性があるからこそ、一人で考えるのではなく、議論し、意見を交換しながら考えていく必要があります。
ア 「重要なものだけを抽出する」ことは、対話的な思考の直接的な理由ではありません。
イ 「個人の判断基準を平準化する」は、社会学が目指す共同の規範作りと関連しますが、「対話的に考える」理由として、認識が異なるという点の方が直接的です。
ウ 「認識は人によって異なる」という問題の前提が、「みんなで考えていく」という手法の理由に最も直接的に繋がります。これが最も適切です。
エ 「遵守すべき基準を多様に示す」ことは、対話的に考える目的の一つかもしれませんが、対話が必要な理由そのものとしては「認識の相違」の方が適切です。
2-3:線②とはどのような問いか。最も適切なものを次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
ア 答えがあるかどうかもわからない、簡単に答えが見つからない問い。
イ 独善的な傾向に陥ることなく、誰もがその考え方に納得できる問い。
ウ問題の細部を掘り下げて表現している、具体的でわかりやすい問い。
エ 難解な内容を含んだ問題を、簡単に考えられるように工夫した問い。
解答 : ア
解説 : 線部②「開かれた問い」は、社会学のいとなみがつねに含みつつ行う問いとして示されています。
その具体的内容は、「『共同の規範』なんてありうるのか、あるいは、とは誰と誰の共同なのか」というものです。これは、社会学が目指す「共同の規範」というものが、そもそも存在するのか、また存在するとしたらその範囲や定義は何なのか、といった、答えが一つに定まらない、あるいは絶えず議論や検証が必要な、根本的な疑問を意味しています。
ア 「『共同の規範』なんてありうるのか」は、存在そのものを問うており、「答えがあるかどうかもわからない」という性質に合致します。また、複雑な社会で伴走しながら知識生産する社会学の性質から、「簡単に答えが見つからない」問いであることは明らかです。最も適切です。
イ 開かれた問いは、むしろ「誰と誰の共同なのか」といった対立や多様性を含み、「みんなが納得できていない」状況から出発するため、「誰もが納得できる」問いとは真逆です。
ウ 「『共同の規範』なんてありうるのか」という問いは、非常に哲学的・根源的であり、「具体的でわかりやすい問い」とは言えません。
エ 社会学は複雑な社会を扱っており、それを簡単に考えられるように工夫した問いが「開かれた問い」であるという説明は、文脈に合いません。
2-4:線③とあるが、どのようなことに「不確実性」があると筆者は述べているか。文章中の言葉を用いて簡潔に書け。
解答 : アザラシの数の推計、漁業被害を減らすための対策の効果やその対策をやった後の正確な効果。
解説 : 筆者は、自然保護分野の「順応的管理」の例としてアザラシの問題を挙げ、その管理において以下の2点に「不確実性」があると述べています。 ・アザラシがどのくらいいるのかを実測から推計した結果 ・対策を立てたとして、それがどういう効果があるか この2点をまとめます。
2-5:線④とあるが、ホリングがこのように主張する理由を、文章中の言葉を用いて八十字以内で書け。
解答 : 生態系や社会について私たちが知識として獲得できることは、獲得できない部分に比べればはるかに小さいので、不確実なもの、知らないものにどう対処するかが大事だから。
解説 : ホリングは、完璧に「わかる」ことを目指すのは無理だと考えています。なぜなら、どれほどデータを集めても、私たちが知り得る知識は、知らない部分に比べて極めて小さいからです。だからこそ、知らないことをなくそうとするのではなく、知らないことを前提として、それとうまく付き合い、対応していく必要がある、と主張しています。
2-6:この文章で筆者が述べている内容として最も適切なものを、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
ア 社会学は揺るぎない正解の発見が目的ではなく、正解らしいものを提案し、実行後に結果を検証して、また考えていくという学問である。
イ社会学は一人の学者だけで研究するものではなく、みんなが協力しながら研究するものであって、我々に協調性が求められる学問である。
ウ 社会学は日常言語に近い言葉で提案をするものなので、人びとの共感を得やすく、問題の抜本的解決につながる可能性がある学問である。
エ 社会学は理想的な社会の実現を目指すものではなく、個人にとって重要な問題を中枢に据えて考える、我々にとっては身近な学問である。
解答 : ア
解説 : ア これは、上記の文章中の記述と完全に一致しており、筆者の中心的な主張です。
イ 社会学は「みんなが協力しながら研究する」点は合致しますが、「我々に協調性が求められる」という主張は、文章の核となる論点ではありません。
ウ 「日常言語に近い言葉で提案をする」点は合致しますが、その結果「問題の抜本的解決につながる可能性がある」という点は、筆者が確実な正解や解明はできないと述べていることと矛盾します。
エ 社会学は「みんなにとって大事だろう」こと、つまり共同の規範を出発点にしており、「個人にとって重要な問題」を中枢に据えているという記述は不正確です。
2-7:この文章を【Ⅰ】~【Ⅲ】の三つの部分に分けたとき、論の展開の仕方として最も適切なものを、次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
ア 【Ⅰ】で問題の核心を簡潔に述べ、【Ⅱ】でそれを具体的にわかりやすく解説して、【Ⅲ】で問題の解決に向けた糸口を暗示している。
イ 【Ⅰ】で自らの考えの概要を述べ、【Ⅱ】でそれを具体的な例を挙げて補強して、【Ⅲ】で考えの基幹となる部分を再度強調している。
ウ 【Ⅰ】で従来の考え方を述べ、【Ⅱ】で具体的にそれを乗り越えるための仮説を立て、【Ⅲ】でこれから目指すべき姿を展望している。
エ 【Ⅰ】で多角的に様々な考え方を述べ、【Ⅱ】で具体的な例を挙げ自らの立場を明確にした上で、【Ⅲ】で主張の正当性を示している。
解答 : イ
解説 : 【Ⅰ】: 社会学の出発点と直面する問題の性質、そして社会学の基本的な姿勢という、筆者の考えの概要を述べています。
【Ⅱ】: 【Ⅰ】で述べた「不確実性への対処」「実行と検証の繰り返し」という知のあり方を、【Ⅰ】とは異なる分野である「自然保護分野での順応的管理」という具体的な例を挙げて補強・説明しています。
【Ⅲ】: 【Ⅰ】で示した姿勢と【Ⅱ】で学んだヒントから、社会学が果たすべき役割を結論づけ、「順応的な営為としての社会学」という考えの基幹となる部分を再度強調しています。
■大問3
次の文章を読み、各問いに答えよ。
今は昔、木こりの、山守に斧(よき)を取られて、わびし、①心憂(こころう)しと思ひて、 頬杖(つらづゑ)突きてをりける。 山守見て、「さるべき事を申せ。取らせん。」といひければ、
悪(あ)しきだになきはわりなき世間(よのなか)によきを取られてわれいかにせん
と詠(よ)みたりければ、山守返しせんと思ひて、「うううう。」と②うめきけれど、えせざりけり。 さて斧返し取らせてければ、うれしと思ひけりとぞ。
( 宇治拾遺物語」による)
(注) 山守=山の管理者
斧=木を切るための道具
頬杖=ほおづえ
さるべき事を申せ=気の利(き)いた歌を詠め(よ)め
悪しきだに=悪い物でさえ
わりなき=困ってしまう
えせざりけり=何もできなかった
解説 : 【現代日本語訳】
今は昔、木こりが、山守に斧を取られて、わびしく、つらい気持ちに思って、頬杖をついて座っていました。
山守がそれを見て、「気の利いた歌を詠め。そうしたら斧を返してやろう」と言ったので、
木こりはその場で詠みました。
「悪しきだになきはわりなき世間に よきを取られてわれいかにせん」
現代語訳:粗末なものでさえ無くなれば困ってしまう世の中なのに、それよりも良い斧を取られてしまって、私は一体どうすればよいのでしょうか。
山守はこの歌を聞いて返歌をしようと思って、「うううう」とうめきましたが、何もできませんでした。
そうして山守は、斧を返して木こりに取らせたので、木こりは嬉しく思ったということです。
3-1:線部を現代仮名遣いに直して書け。
解答 : おりける
解説 : 線部の「をりける」を現代仮名遣いに直すと、「おりける」となります。
古仮名遣い「を」→現代仮名遣い「お」
古語の動詞「居(を)り」(居る、座っている、いる)の連用形「をり」に、過去の助動詞「けり」の連体形「ける」が接続した形です。
3-2:線①と反対の意味をもつ語を、文章中から抜き出して書け。
解答 : うれし
解説 : 「心憂し」は、文脈から「わびしい、つらい、情けない」といった、ネガティブで憂鬱な気持ちを表しています。
物語の結末で、「さて斧返し取らせてければ、うれしと思ひけりとぞ。」と、木こりが山守から斧を返してもらった時の気持ちを表す語があります。
この「うれし」が、「心憂し」と反対のポジティブで喜びの気持ちを表す語として最も適切です。
3-3:線②とあるが、山守はなぜうめいたのか。最も適切なものを次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
ア 大切な道具をなくしてしまい、世間から厳しく非難された木こりの怒りが表現された歌に対し、返答する歌がいくつも思い浮かんだから。
イ 大切な道具をなくしたのに、平然と仕事を続けている木こりの無頓着な態度が表現された歌に対し、あきれて言葉を失ってしまったから。
ウ 大切な道具を取られたのに、不満を漏らさずに働く木こりの不屈の精神力が表現された秀歌に対し、感服して言葉を失ってしまったから。
エ 大切な道具を取られてしまい、仕事ができず途方に暮れる木こりのつらさが表現された秀歌に対し、返答する歌を思いつかなかったから。
解答 : エ
解説 : ア 歌は怒りではなく、つらさや途方に暮れる気持ちを表現しています。また、「返答する歌がいくつも思い浮かんだ」という記述は、「えせざりけり」と矛盾します。
イ 木こりは斧を取られて「わびし、心要し」と思っており、「無頓着な態度」ではありません。
ウ 歌は「不屈の精神力」ではなく、つらさや窮状を表現しています。「感服して言葉を失った」という解釈は可能ですが、返歌をしようとしてできなかったという行動から、「返答できなかった」という理由がより直接的です。
エ 歌の内容、秀歌であること、そして山守が「返しせんと思ひて」後に「えせざりけり」という経緯を最も正確に表しています。
■大問4
4-1:次の行書で書いた図内の漢字を、楷書で書いたものと比較したとき、○で囲まれた部分X、Yの行書の特徴の組み合わせとして最も適切なものを、後のア~エから一つ選び、その記号を書け。

ア X:点画の連続 Y:点画の省略
イ X:点画の連続 Y:点画の丸い
ウ X:筆順の変化 Y:点画の省略
エ X:筆順の変化 Y:点画の丸み
解答 : ア
解説 : ア:Xは筆の繋がり(連続)が最も明確な特徴であり、Yは画の簡略化(省略)が明確です。最も適切です。
イ:Xは適切です。Yは丸みもありますが、楷書で独立していた画が簡略化されている「省略」も非常に強い特徴です。
ウ:Yは適切ですが、Xの繋がり(連続)が筆順の変化よりも視覚的に明確な特徴です。
エ:Xは不適切です。Yは適切ですが、「省略」も強い特徴です。
■大問5
春香さんは、国語科の授業で意見文を書く学習をしている。 次は、春香さんが書いた【構成メモ】と【修正後の構成メモ】、【意見文】である。 これらを読み、各問いに答えよ。
【構成メモ】
[意見] ・「心のバリアフリー」を広めたい。
[根拠] ・脚を痛めた経験 ・声かけをためらう理由
【修正後の構成メモ】
[意見] ・「心のバリアフリー」を広めたい。
[根拠] ・脚を痛めた経験 ・声かけをためらう理由
[意見]・自分から「心のバリアフリー」を実践する。
【意見文】
私は、自分の経験を通して「心のバリアフリー」の大切さを実感した。 多様な人々が共生する社会の実現を目指して、「心のバリアフリー」を広めていきたいと考える。
私は先月、部活動の練習中に脚を痛めて、少しの間、松葉杖を使いながら生活をした。 階段の上り下りや扉の開け閉めなど、私が困っている時に多くの人から「手伝いましょうか。」と声をかけていただいた。 自分から助けを求められずにいた私は、大変助かった。
一方で、困っている人になかなか声をかけることができないという人もいる。 令和元年に国土交通省が行った「「心のバリアフリー」に関するアンケート調査」の中に、声かけや手伝いをしなかった時の理由として、「困っているかどうかわからなかった」「声をかけても断られるのではないかと思った」という回答があった。 以前は私も同じように、声かけをしたり電車で座席を譲ったりすることに対して消極的であった。 それは、私の心の中に他者に対する無関心さや自分の好意を断られて傷つきたくないという思いがあったからだと思い至った。 しかし、そのような考えが目に見えない様々なバリアにつながっているのではないかと考え、自分を変えていこうと思うようになった。
今後、私は、相手が何に困っているかを想像し共感する力を磨いていこうと考えている。 困っている人に対して、適切な距離感で声かけや手伝いをすることが大切だと思うからだ。 自分が行動することで、身近なところから「心のバリアフリー」を広めていきたい。
5-1:春香さんは、友達のアドバイスにより 【構成メモ】に修正を加え、【修正後の構成メモ】を作った。 友達からどのようなアドバイスがあったと考えられるか。最も適切なものを次のア~エから一つ選び、その記号を書け。
ア 声かけをためらう理由を世代ごとに整理して特徴を示すようにしたらよいと思う。
イ 「心のバリアフリー」が広がるメリットを具体的に示すようにしたらよいと思う。
ウ 自分が今後実践しようとしている具体的な行動を示すようにしたらよいと思う。
エ 積極的に声かけをしている人の実践例を追加して示すようにしたらよいと思う。
解答 : ウ
解説 : 【修正後の構成メモ】では、「自分から「心のバリアフリー」を実践する。」という意見が追加されました。つまり、【修正後の構成メモ】では、広めたいという抽象的な目標だけでなく、「自分から実践する」という具体的な行動意思を、追加の意見として明確に打ち出しています。
ウ 追加された意見は「自分から実践する」であり、具体的な行動の意思を示しています。これは、意見文をより行動的で明確な結論にするためのアドバイスとして最も適切です。
5-2:【意見文】からわかる春香さんの述べ方の工夫として最も適切なものを、次のアーエから一つ選び、その記号を書け。
ア問いかけるような言葉を用い、興味を喚起させるよう述べている。
イ 資料を効果的に引用し、自らの体験と結びつけながら述べている。
ウ接続する言葉を効果的に用い、様々な話題を論理的に述べている。
エ 多くの会話表現を用い、文章に臨場感をもたせるよう述べている。
解答 : イ
解説 : ア 文中には疑問文や問いかけの表現はほとんど見られません。
イ 実際に国土交通省のアンケート調査を引用しています。この引用を、「以前は私も同じように…消極的であった」という自己の体験や反省に結びつけ、意見の根拠としています。これは、春香さんの主張を裏付け、説得力を高める重要な工夫です。
ウ 接続詞は使われていますが、資料の引用という非常に具体的な工夫を差し置いて、最も適切とは言えません。
エ引用部分を除き、多くの会話表現は用いられていません。
5-3:あなたが友達にアドバイスをするときに大切だと考えることを、次の 、①、②の条件に従って書け。
条件① 二段落構成で書くこと。 第一段落では、大切だと考えることを具体的に書き、第二段落では、その理由を書くこと。
条件② 原稿用紙の使い方に従って、百字以上百五十字以内で書くこと。
解答 : 私は、相手の状況をよく理解したうえで、相手に寄り添いながらアドバイスをしていきたいと思う。
相手が求めていることを的確に把握することで、より適切なアドバイスができると考える、また、相手の状況によって、自分ではアドバイスができない場合は、他の人の力を借りるなどの提案もできると思うからだ。
解説 : [作文問題]
条件①、②に従って作文しましょう。
